Smile  Again  〜本当の気持ち〜
次の日、俺が沖田達と話をしていると


「塚原くん。」


見ると、そこには長谷川の姿が。


「あの、実はお話したいことがあるんです。時間、もらえませんか?」


「いいけど、いつ?」


「今日、練習終わってからどうですか?私、図書室で調べたいこともあるんで、待ってます。」


「それじゃ悪いよ、明日なら練習ないし、その方が良くない?」


「ううん、少しでも早い方が・・・。」


「そう。わかった、じゃ、夕方、校門のとこで待ち合わせでいいかな?」


「はい。じゃ、お願いします。」


そう言うと、長谷川は昨日のように、ペコリと頭を下げると、俺達から離れて行く。長谷川がいなくなると、周りが途端に騒がしくなる。


「あれぇ、塚原くんもスミに置けませんなぁ。」


「いよいよツカにも春到来か?」


「バカ、そんなんじゃねぇよ。」


「またぁ、照れちゃって。いいじゃん、長谷川さん。ああいうおとなしいタイプの子、うらやましいなぁ。」


「だから沖田、もし告白とかだったら、お前達が周りにいない時にコンタクト取って来るよ。」


長谷川の用件はわかっている。塩崎のことだ、そして自分があいつの妹ってことをキチンと俺に話してくれるつもりなんだ。でもそんなこと、周りの連中に言ってもわからない。そう思って、詳しい説明をしないでいたから、俺はしばらく連中に冷やかされ続ける羽目となった。


今日は天気は大丈夫そう。授業が終わり、俺が教室を出ようとすると


「聡志!」


今更だけど、俺をこの学校で「聡志」と呼ぶ女子は、当然1人しかいない。


「おぅ。」


「あのさ、行きたいとこ、決まったんだけど。待ってるから、今日一緒に帰らない?」


あちゃ~、なんだよ。こんな時に、なんでダブルブッキング・・・当然由夏からのお誘いの方が大事なんだけど、先約をないがしろにするのは、紳士のたしなみに、もとるというものだ。


「すまねぇ。練習終わった後、用事あるんだよ。」


「そうなんだ。沖田くん達とどっか、行くの?」


「あ、ああ。ごめんな、帰ったら電話するから。」


「うん、わかった。じゃ、練習頑張ってね。」


そう言うと、由夏は水木達の方に戻って行く。


俺、嘘ついちまった・・・。なんで嘘なんか・・・別にやましいこと、何もないのに。由夏は幼なじみだけど、今はまだそれ以上の存在じゃないし・・・。でも別の女子と例えどんな用件でも、2人で会うって、やっぱり言いづらいし、仕方ないよな・・・。
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