Smile  Again  〜本当の気持ち〜
練習を終えて、俺が校門に向かうと、長谷川は既に待っていてくれた。


「じゃぁな塚原、ごゆっくり。」


沖田や神達が、ニヤニヤしながら、そう言い残すと去って行く。このバカ野郎共が!


「ゴメンな。アイツら、本当に思いやりとか、そういう精神が欠如してる連中で。」


「いえ、私の方こそ、なんか塚原くんに迷惑かけちゃったみたいで・・・ごめんなさい。」


「そんなことないよ。とりあえず行こう。」


俺達は歩き出したが、由夏以外の女子と、こんなふうに歩くのなんて初めてだから、何を話したらいいか、どうしたらいいか、全く見当もつかない。だいたい話をするって言ったって、どこへ行けばいいのか。女子の好きそうな店は、なんか入り難いし、だいいちデ-トじゃないんだし・・・どうすりゃいいんだ?


長谷川は、と言えば、やはり俯き加減にトボトボ俺の横を歩いている。やっぱりこの子も、あんまりこういうシチュエーションに慣れてはいないようだ。


「お腹すいた?」


これは俺がリ-ドするしかない。とりあえずそう聞いてみるけど、長谷川は黙って首を横に振る。途方に暮れかけた俺の頭に、ふと駅近くのショッピングモールのフ-ドコ-トが浮かんだ。話をするだけなら、かえってああいうガヤガヤしてる所の方が、長谷川に余計な気を遣わせなくていいかもしれない。


俺の提案に、長谷川が頷いてくれたので、ホッとしながら、俺達は歩を進める。夕方のフ-ドコ-トは親子連れは少なく、俺達のように学校帰りの制服姿が結構いて、この選択肢は間違っていなかったようだ。俺達はコ-ヒ-を買い求めると、空いてる席についた。


「最初に言っとくけど、確かに俺達、あんまり話もしたことないけど、一応クラスメイトじゃん。だから、敬語はもう勘弁な。」


「はい、わかりました。ごめんなさい。」


「だから、それを言うなら、『うん、わかった。ごめん』だろ。」


「そっか。」


俺達は、顔を見合わせて笑う。ようやく空気が少しほぐれた。


「塚原くん、あの時は本当にごめんなさい。」


でもいきなり謝罪から始まって、なんでこの子が俺に謝るのか、俺は正直きょとんとする。


「本当に嫌な思いしたよね。確かにお兄ちゃんって、ぶっきらぼうで、わがままなところがあるけど・・・あの頃のお兄ちゃん、本当に荒れてたから。」


そうか、長谷川は兄貴の代わりに謝ってくれてるのか。


「あの頃、うちの家庭、最悪だった・・・。」


長谷川は話し始めた。
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