Smile Again 〜本当の気持ち〜
「野球のことだけじゃない。最初の頃は、あんなに明るかった塚原くんが、お兄ちゃんとのことが原因で、だんだん周りに心を閉ざして行って・・・。再会しても変わってなくて・・・。見てて辛かった。」
俺は、仙台の頃の長谷川のことを全く覚えていない。というか塩崎に妹がいて、同じ学校、学年にいることも知らなかった。同じクラスになったこともないし、今の長谷川を見てもわかるように、たぶん大人しくて、目立たない子だったんだろう。
だけど彼女の方は、俺のことを知っていて、心を痛めてくれてたなんて、むしろ俺の方が申し訳ない気がする。
「声を掛けようと思ったことは、何度もあったけど、塩崎知久の妹である私に、話し掛けられても、塚原くんが嫌な思いをするだけだろうって思って・・・。」
そんなことねぇよって言いかけて、俺はその言葉を呑み込んだ。ちょっと前までの俺だったら、それこそ長谷川を傷付けるような対応を、平気でしてしまっただろうから。
「だから、塚原くんを練習や試合の時に、そっと応援することしか出来なかった。今年、クラスが一緒になったけど、その思いは変わらなかったから・・・。」
俺、何か言わなきゃな。でもなんて、言ったらいいんだろう・・・。
「お兄ちゃん、東京の大学に入って、今こっちにいるんだ。一緒に住んでるわけじゃないんだけど、たまにウチに遊びに来てて。昨日もたまたまいて、それで傘持ってきてくれて、塚原くんに会っちゃったの。」
「そうか・・・。」
「お兄ちゃんは、ひょっとしたら、塚原くんと会うかもって思ってたみたいで、その時は謝ろうって思ってたらしいんだけど、いざとなったら、俺の方が先輩だとか、つまんないプライドが邪魔したみたいで・・・子供だよね。」
ここで、長谷川がようやく笑った。その笑顔を見て、俺もなんかホッとして笑顔になる。
「長谷川。」
「うん?」
「今日はありがとう。」
「えっ?」
「いろいろ話してくれて。そして、君にいろいろ迷惑かけてたみたいで、ごめん。」
「そんなこと・・・。」
「塩崎さんに伝えてくれないかな。」
そう言うと、俺は長谷川を改めて見た。
「あの時のことは、塩崎さんが一方的に悪いわけじゃないし、俺だけが悪いわけでもない。だからもう、終わりにしましょうって。あと、俺がピッチャ-を辞めたのは、自分のせいだし、結果的にキャッチャ-になって、俺はもっと野球が好きになれました。だから後悔はしてませんって。」
「塚原くん・・・。」
「遅くなっちゃったな。さぁ、行こう。」
駅まで長谷川と一緒に歩きながら、俺は長年のわだかまりが解けたような、暖かい気持ちになっていた。長谷川に感謝しなくちゃな。
「本当に今日はありがとう。」
帰りの電車が逆方面なので、改札口を通ると、俺は長谷川に言った。
「ううん、私もなんか肩の荷が下りたような気がする。」
俺達は笑顔を交わし合う。
「じゃ、また明日。」
「あの。」
俺を呼び止めた長谷川は、一瞬躊躇したように俯いたけど、すぐにまた俺を見た。
「また、誘ってもいいですか?今度はもっと違うお話を出来たら、嬉しいです。」
「えっ、う、うん・・・いいけど・・・。」
「ありがとう。じゃ、さようなら。また明日。」
恥ずかしそうにちょこんと俺に頭を下げると、長谷川は小走りに去って行った。
(長谷川・・・。)
そんな長谷川の後ろ姿を、俺はしばらく見送っていた。
俺は、仙台の頃の長谷川のことを全く覚えていない。というか塩崎に妹がいて、同じ学校、学年にいることも知らなかった。同じクラスになったこともないし、今の長谷川を見てもわかるように、たぶん大人しくて、目立たない子だったんだろう。
だけど彼女の方は、俺のことを知っていて、心を痛めてくれてたなんて、むしろ俺の方が申し訳ない気がする。
「声を掛けようと思ったことは、何度もあったけど、塩崎知久の妹である私に、話し掛けられても、塚原くんが嫌な思いをするだけだろうって思って・・・。」
そんなことねぇよって言いかけて、俺はその言葉を呑み込んだ。ちょっと前までの俺だったら、それこそ長谷川を傷付けるような対応を、平気でしてしまっただろうから。
「だから、塚原くんを練習や試合の時に、そっと応援することしか出来なかった。今年、クラスが一緒になったけど、その思いは変わらなかったから・・・。」
俺、何か言わなきゃな。でもなんて、言ったらいいんだろう・・・。
「お兄ちゃん、東京の大学に入って、今こっちにいるんだ。一緒に住んでるわけじゃないんだけど、たまにウチに遊びに来てて。昨日もたまたまいて、それで傘持ってきてくれて、塚原くんに会っちゃったの。」
「そうか・・・。」
「お兄ちゃんは、ひょっとしたら、塚原くんと会うかもって思ってたみたいで、その時は謝ろうって思ってたらしいんだけど、いざとなったら、俺の方が先輩だとか、つまんないプライドが邪魔したみたいで・・・子供だよね。」
ここで、長谷川がようやく笑った。その笑顔を見て、俺もなんかホッとして笑顔になる。
「長谷川。」
「うん?」
「今日はありがとう。」
「えっ?」
「いろいろ話してくれて。そして、君にいろいろ迷惑かけてたみたいで、ごめん。」
「そんなこと・・・。」
「塩崎さんに伝えてくれないかな。」
そう言うと、俺は長谷川を改めて見た。
「あの時のことは、塩崎さんが一方的に悪いわけじゃないし、俺だけが悪いわけでもない。だからもう、終わりにしましょうって。あと、俺がピッチャ-を辞めたのは、自分のせいだし、結果的にキャッチャ-になって、俺はもっと野球が好きになれました。だから後悔はしてませんって。」
「塚原くん・・・。」
「遅くなっちゃったな。さぁ、行こう。」
駅まで長谷川と一緒に歩きながら、俺は長年のわだかまりが解けたような、暖かい気持ちになっていた。長谷川に感謝しなくちゃな。
「本当に今日はありがとう。」
帰りの電車が逆方面なので、改札口を通ると、俺は長谷川に言った。
「ううん、私もなんか肩の荷が下りたような気がする。」
俺達は笑顔を交わし合う。
「じゃ、また明日。」
「あの。」
俺を呼び止めた長谷川は、一瞬躊躇したように俯いたけど、すぐにまた俺を見た。
「また、誘ってもいいですか?今度はもっと違うお話を出来たら、嬉しいです。」
「えっ、う、うん・・・いいけど・・・。」
「ありがとう。じゃ、さようなら。また明日。」
恥ずかしそうにちょこんと俺に頭を下げると、長谷川は小走りに去って行った。
(長谷川・・・。)
そんな長谷川の後ろ姿を、俺はしばらく見送っていた。