Smile  Again  〜本当の気持ち〜
あれから、俺は、長谷川の最後の言葉のことを考えていた。あれって、どういう意味なんだろう?また会いたいって、言われたって、ことだよな。


別に、拒否する理由もないから、なんとなく、ウンって言っちまったけど・・・。


次の日の朝、なんとなくモヤモヤした気持ちのまま、教室に入った俺は、由夏と目が合った。


「おはよう。」


いつものように、声を掛けるけど、由夏はすぐにソッポを向いて、返事もしない。なんだよ、と思った次の瞬間、俺は、ハッとなった。


(ヤベッ。昨日の夜、由夏に電話する約束だったんだ。)


焦った俺が、慌てて由夏に近づこうとすると


「おはよう、塚原。どうだった昨日の成果は?」


という言葉と共に、肩を掴まれる。振り向けば、ニヤニヤ顔の沖田だ。


「長谷川さんと、話は弾んだか?」


この悪魔のような言葉を聞いた時、こいつとはバッテリーとして、苦楽を共にした仲だが、ぶん殴って、一生縁を切ってやると、マジで思った。


だけど、焦る俺の気持ちなんか、お構いなしに周りの連中が、沖田の言葉に反応して


「おい、塚原、そりゃどういうことだ?」


「長谷川とデートしたのかよ。聞いてねぇぞ。」


と食いついて来る。この半年で、友達が増えてたことを、この時ばかりは後悔した。


結局、この騒動を鎮めるには、俺と長谷川の、一昨日初めてわかった因縁と、話の内容を正直に話すしかなかった。長谷川には、迷惑をかけてしまった。


それで、周りの連中の騒ぎは、とりあえず収まったが、こんな奴らは実はどうでもいい。あくまで、問題は由夏であり、俺はなんとか、あいつに話し掛けようとするけど、由夏は俺を完全シャットアウト。


このままじゃ、まずい。俺がなんとか、由夏に近づけたのは、この日の授業が終わり、あいつが水木と桜井と3人で、教室を出て、帰ろうとしてる時だった。


「由夏!」


その声にも、由夏は知らん顔で立ち去ろうとしたけど、水木が引き留めてくれて、とりあえず、あいつの足は止まる。


「昨日はゴメン。あのさ・・・。」


そんな俺の言葉を遮るように


「なんでウソついたの?」


と冷たい声。


「由夏・・・。」


二の句が告げなくなる俺。


「別に私達、ただの幼なじみだし、付き合ってるわけじゃないんだから、聡志が誰と会ったって、私が文句言う筋合いじゃないよね。」


「・・・。」


「なのに、なんでウソついたの?長谷川さんと会うなら、そう言ってくれればよかったじゃん。沖田くん達と出掛けるなんて、ウソついて、何かやましいことでもあったの?」


「いや、それは・・・。」


「約束破られたのもショックだけど、それ以上に、ウソつかれたのが、許せない。嘘つきで、約束守らないって、最低の人間じゃん!」


ずっと、俺に背中を向けたまま、由夏はそう言うと


「悠、加奈、行こう。」


と立ち去って行く。


(また最低って、言われちまった。この前の最低も、まだ謝れてねぇのに・・・。)


由夏の後ろ姿を俺は、何も言えずに見送るしかなかった。
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