Smile  Again  〜本当の気持ち〜
長谷川という子は、大人しくて、目立たないっていう印象だったんだけど、話してみると、しっかりしてるというか、結構ハキハキしてる。


話すようになって、周りから、あれっていう感じで見られたり、冷やかされたりして、俺の方は意識したり、照れたりしてるのに、長谷川は特に気にする様子もなく、自然体。


この日も、授業が終わって、彼女と話していると、由夏が水木達と帰って行くのが見えた。


由夏と再会してから3年。これまで数々の失言、失態であいつを怒らせてきた。よくぞ、それでもなんとかクラスメイト、幼なじみとして会話を交わせるようになったと思うが、昨日のは、極めつけの大失態、大失言だった。


何であの時、あの状況で、あんなことを言ってしまったのか、自分でも全くわからない。あれは、確かに俺が由夏にずっと伝えたかったこと。だけど・・・


TPOをわきまえない、ということが、どんなに恐ろしい結果を生むか。


『バカにするのも、いい加減にしてよ!』
『私達、本当に合わないんだね。』
『再会しなきゃよかったんだよ。』


・・・何も言えない、言うことないよ。ゴメン、由夏・・・。


「塚原くん。」


自分を呼ぶ声に、俺はハッと我に返る。そうだよ、俺は今、長谷川と話してる最中なんだよ。なにやってんだ・・・。


「うん?」


「今度の土曜日から、大学の練習、始まるんだっけ?」


「ああ。」


「日曜日も?」


「いや。地方から出て来る奴らがまだだし、本格的な始動ってわけじゃないから。」


「じゃ、一緒に野球見に行かない?」


「野球?」


「うん。東京ド-ムのオ-プン戦、GvsE、チケットもらったんだ。どう?」


プロ野球観戦か、いつ以来だろう。小学生の頃、何回か父さんやコ-チにド-ムに連れてってもらったけど、それ以来か・・・。


「でもいいのか、俺なんかとで?塩崎さんとか友達誘った方が・・・。」


「私とじゃ嫌?」


上目使いにそう言われて、ドキリとしてしまう俺。


「いや、そんなことねぇけど。なんか悪いかなと思って・・・。」


「誰に?私は塚原くんと行きたいから、誘ったんだけどな。」


そう言って、真っ直ぐ俺を見る長谷川。これは敵わねぇよ・・・。


「そ、そうか。ありがとな。じゃ、遠慮なく。」


「よかった。じゃ、よろしくね。」


「あ、ああ。」


こうして、俺の人生初のデ-ト(?)が突然実現することになった。そう言えば、由夏と出かける約束してたんだよな。あいつ、行きたいとこ決めたって言ってたけど、どこだったんだろう。まさかその約束を果たせないまま、由夏以外の女子と2人で出かけることになるなんてな・・・。
< 182 / 217 >

この作品をシェア

pagetop