Smile  Again  〜本当の気持ち〜
試合は結局、Eの勝利。生まれ故郷のチ-ムの勝利を喜んでる長谷川の横で、松本さんに挨拶のメ-ルを送ってから、俺は立ち上がった。


出口に向かって、歩き出すとメ-ルの着信音が。見れば松本さんからだ。


『今日はありがとう。よかったら、ちょっと話さないか?』


えっ、マジで?これはありがたい、長谷川に言うと、彼女も大喜びで、俺達は先輩の指定する球場の関係者専用駐車場に向かった。


先輩が話を通しといてくれて、すんなり中に入れた俺達は、手を振ってくれてる松本さんを見つけて、駆け寄った。


「先輩、お疲れ様です。」


「おう、せっかく来てくれたのに、負けちゃったけどな。」


一礼する俺達を、先輩は笑顔で迎えてくれる。


「あ、クラスメイトの長谷川菜摘さんです。今日は彼女が誘ってくれて。」


「そうなんだ。三塁側に居たってことは、Eファンかな?」


「すみません、私仙台出身なんで。」


「そうか。それじゃ、塚原とは縁があるね。」


「はい。」


「塚原からメ-ルもらった時、終わってからメシでもと思ってたんだけど、まさか女の子と一緒とはな。意表をつかれたよ。」


「先輩・・・。」


冷やかし気味の松本さんのセリフに、俺は照れてしまう。


「あんまり邪魔しても悪いから、手短に。卒業おめでとう。」


「ありがとうございます。」


「今更だが、お前がいなかったら、俺達は最後の2回の甲子園は行けなかったかもしれないな。俺達先輩を引っ張って、よくやってくれた。ありがとう。」


「先輩・・・。」


「大学に進むと、また一段階上がった野球があると思う。だが、お前ならやれるよ。ケガだけには、気を付けて、頑張れよな。こんな可愛い子が応援してくれるんだし。」


「えっ?」


「はい、ありがとうございます。」


先輩の言葉に驚く俺の横で、なぜか長谷川が、元気よくお礼を言っていた。


松本さんと別れて、歩き出した俺達。


「ゴメン。」


「どうしたの?」


「なんか松本さん、俺達の事、勘違いしたみたいで・・・。」


「勘違い?」


俺がそう言うと、長谷川が足を止めた。


「塚原くんには迷惑だったんだ、先輩の勘違い。」


「長谷川・・・。」


そう言うと、ちょっと機嫌を損ねたような表情で、また歩き出す長谷川。いつか同じような光景に出会ったような気がするが、いつだったっけな?


それでも、白鳥さんのアドバイスに従って、少し早めの夕食に誘うと、ご機嫌を直して、頷いてくれた。


ドームの近くの店は混んでいたので、長谷川の地元まで戻った俺達は、ファミレスで今日の試合のことや、松本さんのこと、更には自分達の将来の夢のことなんかを話しながら、時を過ごした。


気がつけば、時計の針は8時になろうとしている。結構盛り上がったな、俺達は席を立った。


「塚原くん、ご馳走になっちゃって。どうもありがとう。」


長谷川にチケット用意してもらったんだから、そんなの当然だよな。俺達は肩を並べて歩き出した。


「私、駅に自転車止めてるから。今日はどうもありがとう。」


「こちらこそ、楽しかったよ。」


「本当に?なら、よかった。」


そう言うとニコリと微笑んでくれた長谷川だけど、すぐその表情は硬くなる。沈黙が俺達を包む。


「じゃ、俺、これで・・・。」


「塚原くん!」


「えっ?」


突然、大きな声で俺を呼び止める長谷川。


「こんな所で・・・でも今日は決めてたから。」


「長谷川・・・。」


「好きです。」


「えっ?」


思わず耳を疑う俺を、長谷川はまっすぐ見つめる。


「ずっと前から、仙台にいる頃から、塚原くんのことが好きでした。」


情けない話だけど、その言葉を聞いた俺は、ただ呆然と立ち尽くすだけだった。
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