Smile  Again  〜本当の気持ち〜
眠れない夜を過ごした私は、翌朝、耐えきれなくなって、2人の親友にSOSを出した。悠は、今日はみどりさんと約束があるそうで、加奈が付き合ってくれることになった。


「本当にゴメン、急に。」


「いいんだよ、前にも言ったじゃん。私は由夏達に誘われなきゃ、予定0だって。」


待ち合わせ場所の甘味処で頭を下げる私に、加奈は優しく微笑む。悠といい、加奈といい、私は本当に友達に恵まれたな。


注文を済ませて、改めて向かい合うと、いきなり加奈が


「さすがに、もう認めるよね?」


と、いたずらっぽい笑みを浮かべて言う。


「はい、認めます。悔しいけど・・・。」


うつむき加減に答える私。


「『悔しいけど』が余計。」


「だって、本当に悔しいんだもん。」


「由夏らしいね。」


そう言ってまた笑う加奈。


「加奈は笑うけど、だってあいつ本当にひどい奴なんだよ。前にも少し話したけどさ・・・。」


私は、加奈に聡志とのこれまでの因縁を話した。生まれてから本当にいつも一緒にいたこと、それが小学校3年の夏休み明けになって、理由もわからず、突然突き放されて、仲直りできないまま聡志が小学校卒業と同時に仙台に引っ越してしまったこと。


そして何の前触れもなく戻って来て、高校で再会しても、最初はろくに返事もしてくれなかったこと。それでも少しずつ、学校の外で会ったりすると、会話が復活し始めたこと。


「だけど、幼なじみに戻ろうって言っても、拒否されるし、あいつが野球部辞めるとか騒ぎ出して、心配してやっても、別にありがとうの一言もくれるわけでもないし。それから・・・。」


「それから?」


「ううん、とにかくあいつはとんでもない奴なんだよ。」


去年の夏に、一回、あいつのことが好きなんじゃないかって思って、1人で騒いだ挙句、あっさり肩透かしを食ったことは、さすがに言えなくて、というか言いたくなくて、私は話をここで終わらせた。


「なるほどね・・・。でも、好きなんでしょ?」


「・・・うん・・・。」


私が勢い込んで話すのを、加奈はずっと聞いてくれてたけど、終わった途端に、あっさりそう決めつけられて、私は白旗を上げる。

 
長谷川さんと2人で出かけるなんて聞いてないし、だいたい私と一緒に出かける約束はどうなっちゃったの?私、一所懸命にどこに行こうか考えたのに・・・。それに告白されたのをさ、私にわざわざ話すなんて、ほんと最低だよね。


それを聞いた私は、とにかく悔しくて、悲しくて、つらくて、そしてジェラシ-の塊になって、一晩を過ごした。理由はたった1つ。


私、岩武由夏はあいつ、塚原聡志が、やっぱり好きだったってこと・・・。
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