Smile Again 〜本当の気持ち〜
そのコールに、剣は驚いたように居郷さんを見たが、次に顔を真っ赤にして、俺を睨み付けてきた。バカにされたと思ったんだろう。
「ツカ、それでいいんだ。」
ベンチから白鳥さんの声がする。道原からボールを受け取りながら、俺は頷く。そして、またキャッチボールの要領で、しかしさっきより少し力を入れてみる。やっぱり違和感はない。
2度同じ手は食わないとばかり、剣はバットを振ったが、タイミングが合わずに空振り。更に3球目も同じ要領で投げると、舐めんなとばかりに強振して、痛烈なライナーが飛ぶが、神の真正面。天を仰ぐ剣。
「よし、ツーアウトだ。」
神の声は明るいが、しかし次のバッターは仁村・・・。単細胞の剣には、おちょくるようなピッチングが功を奏したが、仁村には通用しまい。
さて、どうしたものかと思っていたら
「聡志!何、今の投球?それでもベアーズのエースだったの?もっとプライドを持ちなさいよ。」
由夏の奴が、いつの間にか、バックネット裏に来て、正面から俺に、野次だか叱咤だかよくわからない言葉を浴びせて来る。ベアーズって、そんな昔のこと言われたって・・・。
「相手は仁村くんだよ。小細工なんか、通用しない。小学校の頃を思い出して、とにかく全力で投げるんだよ。あの頃の聡志は、ただバッ
ターに全力で立ち向かうことだけを考えて、あとは無心で投げてた。余計なことなんか、考えないで。だいたい、いろんなこと考えられる程、聡志アタマ良くないじゃん。」
お前な・・・。
「塚原くん、私に野球を完全に諦めさせてくれた、あの球がもう1度見たい。あなたなら投げられる、絶対に。」
なんて長谷川まで、俺に呼び掛けてくる。なんかスゲェ恥ずかしいんだけど。
「よし、じゃ可愛い女子2人のご期待に応えて、そろそろ本気出すか、塚原!」
道原まで、調子に乗って、なんか言って来やがる。もうわかったよ・・・。
(わかったから、もうみんな黙ってろ!)
俺はまた力を入れて投げ込んだ。そして次の瞬間
「えっ?」
我ながら、惚れ惚れするような速球が、微動だにしない道原のミット目掛けて・・・。
「ストライク!」
居郷監督のコールにまたギャラリーが湧く。手が痺れねぇ、どうなってんだ・・・?
「司、何やってるの?塚原先輩、蘇ったよ。小学校の時の借りを返すチャンスだよ、しっかりしなよ!」
今度は白石が仁村を叱咤って、オイオイ、お前今日は俺達のチームのマネージャーだろ!
外野が騒がしくなって、戸惑う俺が、改めて仁村を見れば、眼光鋭く俺を見据えている。完全にスイッチが入った面構えだ。
(今のがマグレか奇跡か、もう1球だ!)
俺は渾身のストレートを投げ込む、今度もストライクゾーンに行った。だが、仁村のバットは一閃。
凄まじい金属音と共に、打球はライトへ。やられた、と振り返るといい角度で上がった打球は、意外と伸びずに、ライトのグラブにすっぽり収まった。
「よっしゃ!」
俺は思わずガッツポーズ、ナインもまるで、甲子園で優勝したかのような勢いで、マウンドの俺に駆け寄って来る。
(先輩の球威に負けました。やっと最後に僕の憧れていた先輩に戻ってくれましたね。)
仁村は打ち取られたのに、なぜか笑顔。先輩はベンチでウンウンと頷き、長谷川は涙ぐんで俺を見ている。
そして、あいつは、大はしゃぎで水木達と抱き合ってた。
「ツカ、それでいいんだ。」
ベンチから白鳥さんの声がする。道原からボールを受け取りながら、俺は頷く。そして、またキャッチボールの要領で、しかしさっきより少し力を入れてみる。やっぱり違和感はない。
2度同じ手は食わないとばかり、剣はバットを振ったが、タイミングが合わずに空振り。更に3球目も同じ要領で投げると、舐めんなとばかりに強振して、痛烈なライナーが飛ぶが、神の真正面。天を仰ぐ剣。
「よし、ツーアウトだ。」
神の声は明るいが、しかし次のバッターは仁村・・・。単細胞の剣には、おちょくるようなピッチングが功を奏したが、仁村には通用しまい。
さて、どうしたものかと思っていたら
「聡志!何、今の投球?それでもベアーズのエースだったの?もっとプライドを持ちなさいよ。」
由夏の奴が、いつの間にか、バックネット裏に来て、正面から俺に、野次だか叱咤だかよくわからない言葉を浴びせて来る。ベアーズって、そんな昔のこと言われたって・・・。
「相手は仁村くんだよ。小細工なんか、通用しない。小学校の頃を思い出して、とにかく全力で投げるんだよ。あの頃の聡志は、ただバッ
ターに全力で立ち向かうことだけを考えて、あとは無心で投げてた。余計なことなんか、考えないで。だいたい、いろんなこと考えられる程、聡志アタマ良くないじゃん。」
お前な・・・。
「塚原くん、私に野球を完全に諦めさせてくれた、あの球がもう1度見たい。あなたなら投げられる、絶対に。」
なんて長谷川まで、俺に呼び掛けてくる。なんかスゲェ恥ずかしいんだけど。
「よし、じゃ可愛い女子2人のご期待に応えて、そろそろ本気出すか、塚原!」
道原まで、調子に乗って、なんか言って来やがる。もうわかったよ・・・。
(わかったから、もうみんな黙ってろ!)
俺はまた力を入れて投げ込んだ。そして次の瞬間
「えっ?」
我ながら、惚れ惚れするような速球が、微動だにしない道原のミット目掛けて・・・。
「ストライク!」
居郷監督のコールにまたギャラリーが湧く。手が痺れねぇ、どうなってんだ・・・?
「司、何やってるの?塚原先輩、蘇ったよ。小学校の時の借りを返すチャンスだよ、しっかりしなよ!」
今度は白石が仁村を叱咤って、オイオイ、お前今日は俺達のチームのマネージャーだろ!
外野が騒がしくなって、戸惑う俺が、改めて仁村を見れば、眼光鋭く俺を見据えている。完全にスイッチが入った面構えだ。
(今のがマグレか奇跡か、もう1球だ!)
俺は渾身のストレートを投げ込む、今度もストライクゾーンに行った。だが、仁村のバットは一閃。
凄まじい金属音と共に、打球はライトへ。やられた、と振り返るといい角度で上がった打球は、意外と伸びずに、ライトのグラブにすっぽり収まった。
「よっしゃ!」
俺は思わずガッツポーズ、ナインもまるで、甲子園で優勝したかのような勢いで、マウンドの俺に駆け寄って来る。
(先輩の球威に負けました。やっと最後に僕の憧れていた先輩に戻ってくれましたね。)
仁村は打ち取られたのに、なぜか笑顔。先輩はベンチでウンウンと頷き、長谷川は涙ぐんで俺を見ている。
そして、あいつは、大はしゃぎで水木達と抱き合ってた。