Smile  Again  〜本当の気持ち〜
私の為に、わざわざデートを遅らせてまで、時間を作ってくれた先輩と、それを快く許してくれた親友。2人の心遣いは本当に嬉しかったし、有り難かった。


でも、申し訳ないけど、先輩の話は、私の心にはあまり響かなかった。私は聡志に振られてしまった、その現実はもうどうにもならないんだもん。


悲しいし、辛いけど、今は私がコクる前に、決着したことで、これから聡志に会う時も、変なわだかまりや気まずい空気が流れずに済むことを、不幸中の幸いと思おう。


こちらがヨシッて思う度に、なぜか水をかけるようなことばかりして来た聡志に、なんだよと思う気持ちもあるけど、でも私はやっぱりあいつが嫌いになれない。仲の良い幼なじみとして、これからも付き合っていければ、いいと思う。


先輩と別れて、1人ブラブラとウィンドーショッピングをしながら、私は少しずつだけど、そう心の整理を始めていた。


明日は卒業式。高校卒業と同時に、幼い頃からの恋も卒業するのも、いい機会だし、大人になる為の大切なステップなんだよ、きっと。


夕方、帰宅した私は、両親に笑顔を見せて、心配掛けたことを詫びた。もちろんまだ無理に作ってる部分はあるけど、ね。


そんな私を見て、少し安心した両親は、1日早いけど、卒業祝いと大学の入学祝いを兼ねて、食事に行こうと言ってくれた。そう来なくっちゃ!


でも連れてってくれたのは、よりによって、聡志一家が仙台に引っ越す時に、送別会をやったお店。あの時以来、久しぶりの来訪だったけど、美味しいものをご馳走してもらって、バチが当たるけど、複雑な気持ちにさせられた。


帰って、明日の準備をしていると、携帯が鳴った。ディスプレイには聡志の名前が。なんで今、ホントに間の悪いというか、何も考えてないというか・・・。


でも無視とか、そんな子供じみたことはもう嫌だから、私は通話ボタンを押す。


『由夏、連絡遅くなってゴメンな。』


そうか、落ち着いたら電話するとか言ってたっけ。


『それに今日はコ-チ達とメシ食いに行ったんだろ?本当はウチと一緒に行くつもりだったみたいだけど、俺が予定があったから・・・。』


そうなんだ、でもよかったよ。6年前の二の舞で、また気まずいお食事会になっちゃうとこだった。


『それで明日なんだけどさ、最後だから一緒に学校行かねぇか?』


はぁ?


『それと・・・帰りに時間もらえねぇかな?』


こいつ、何考えてるの?まさか律儀に「俺、長谷川と付き合うことにしたから」とか報告してくれるつもりなの?


「悪いけど遠慮しとく。」


大きな声を出したくなるのを、必死にこらえて、私は答える。


「卒業式のあとは、大切な人と過ごした方がいいよ。」


『由夏・・・。』


「まさか2日、一緒に過ごしただけで、長谷川さんのこと、もう飽きちゃったわけじゃないでしょ?」


電話の向こうで、聡志が息を呑むのが感じられる。


「じゃ、おやすみ。」


私は構わず電話を切った。ア~ァ、また可愛くないこと言っちゃった。でもこのくらい言っても許されるよね、だって私、失恋したんだもん。ダメ-ジ受けたのは、こっちの方なんだから・・・。
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