Smile  Again  〜本当の気持ち〜
そして迎えた卒業式。


去年も一昨年も送る側だった私達が、後輩、諸先生そしてここまで慈しみ、育ててくれた保護者達の暖かい拍手に送られる時が来た。


あっという間の3年間だった。だけど充実してた、楽しかった、幸せだった。たくさんの友達と出会い、たくさんの素敵な思い出が出来た。


山上先生に名前を呼ばれて、壇上へ上って、校長先生からもらった卒業証書。その後のいつもにも増して気合が入って、やたら長かった校長の祝辞。後輩からの送辞を受けて、私達を代表して、答辞を述べた加奈の凛々しい姿。


教室に戻って、去り行く私達に贈ってくれた山上先生の言葉には、みんな涙した。


明協高校、ありがとうね!3-Aのクラスメイト達、みんなのことは忘れないからね!


全てが終わり、離れ難い思いを抱きながら、私達は教室を後にする。万感の思いで、教室に向かって深々と一礼している悠の横で、やはり見納めだと思いながら、教室を見ていた私は、ふっと長谷川さんと目が合った。


すると彼女がちょこんと会釈してくれて、私も笑顔でそれを返す。正直、特別親しくなかった私達は、それ以上のコミュニケーションはなかったけど、なにか嬉しかった。


(長谷川さん、聡志のこと、よろしくね。あいつ、悪い奴じゃないから、あなたとはきっといいカップルになるよ。私はそんなあなた達を、聡志の幼なじみとして、見守らせてもらうからね。)


なんて思っていた私は、ちょっと偉そうかな。


それから私は、悠と加奈と3人で、校内の思い出の場所を巡った。1.2年の時の教室、学食、体育館、屋上・・・そして最後に野球部のグラウンドへ。


私達は野球部の関係者でも何でもない、ただのギャラリ-。だけど、ここには、やっぱりたくさんの思い出がある。


「ここも私達の高校生活では、重要な場所だったよね。」


「そうだね。」


思わず呟いた私の言葉に、悠は頷いてくれる。


「私達、もしあの時、勇気を出して、野球部に入ってたら、どうなってたかな?」


そんな悠の問いに、私は一瞬、言葉に詰まった。


そうだよね、本当にどうなってたんだろうね?松本先輩とも白鳥先輩ともみどりさんとも、そして聡志とも全然違う関わりが生まれていたのかもしれない。だけど・・・。


「そうだね。でもなんか想像つかない。私達はここで先輩達を応援してるのが、似合ってたんだよ。」


そう言って、私は笑う。だって、過去はもう変えられない、想像しても、後悔しても、どうしようもないんだから・・・。
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