Smile  Again  〜本当の気持ち〜
そうだよな、あのことを避けて通るわけには、いかないよな。あれが全てのボタンの掛け違いの始まりなんだから・・・これを話したら、由夏にどんなに呆られ、軽蔑されるか。でも、もう覚悟を決めるしかない。


「お前が悪いなんて、あり得ない。俺だって、ずっとお前と仲良しで、一緒にいて、あの時の約束通り、将来は結婚するんだって、何の疑いもなく思ってた。」


「あの時の約束・・・。」


その言葉に驚いたように、俺を見る由夏。


「今考えたら、うぬぼれてたよな、笑っちまうよ。だけど、所詮は小3のガキだった。」


俺はここで由夏から視線を外す。あまりにも情けない告白をしなきゃならなくて、耐えきれなくなったからだ。


「夏休み明けてから、すぐだった。俺は何人かの連中に囲まれた。そして言われた『お前、いつも岩武と一緒だな。いい年して、女とばっか、遊んでるって変な奴。このオトコオンナ』って。オトコオンナが悔しくてな、ふざけんな、俺は男だって言い返したら、『じゃ、証拠を見せろ。俺達の前で岩武をイジメてみろ』って・・・。」


「まさか、それで・・・。」


「その、まさか、です・・・。」


俺は思わず俯く。


「お前をイジメるなんて、あり得ない。でもなんか引っ込みつかなくなっちゃって・・・。仕方ないからとりあえずは、みんなの前で口きかないようにしようって。ほとぼりが冷めた後に、謝って、仲直りすればいいや、そう思った。」


「信じらんない・・・。」


予想通り、呆れたようにつぶやく由夏。俺はいよいよ由夏の顔を正視出来なくなる。


「でもさ、もう話し掛けてくんなって、俺が言った時、お前、大してショックも受けずに、平然としてたよな。」


「えっ?」


「次の日からも、特に俺に近づいて来る様子もなく、普段通りで・・・。そんなお前を見てたら、お前にとって、俺って実はどうでもいい存在だったんだなって思って、すっかり仲直りを切り出す勇気もなくなっちゃって。それでそのまま・・・。」


「ふざけないで!」


突然の大きな声、見れば由夏の怒り顔が。


「何言ってんの?あの時、私が何も言えなかったのは、あまりにもショックで、言葉も出なかったから。その後、悪いことしたならごめんなさいって、必死に謝ろうとしてた私を、近づけようともしなかったのは、そっちじゃない!あの時、私がどんなに泣いたか、知ってる?」


鬼の形相って、こういう表情のことを言うのかな、なんてこの状況で思ってた俺って、相当呑気かな?


「もういいでしょ!」


そう言い捨てて、駆けだそうとしてる由夏の腕を、俺は慌てて掴む。だけど


「離して、これ以上、付きまとうなら、人を呼ぶから!」


俺を振り払った由夏は、そのまま走り出した。
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