Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「ねぇ、私達、今どうしてる?」


由夏の言葉に、俺はハッとする。


(いけねぇ、手繋いたままだ。)


由夏を引き止めようとして、左手を掴んだままだったことに気づき、慌てて引っ込めようとしたけど、由夏はぎゅっと握ったまま、離そうとはしない。


「だからぁ、なんでそうやって、慌てて振りほどこうとするの?こういうことがあるといつもそうじゃん。だから私のこと、嫌いなんだなって、思っちゃって、傷つくんだよ。こっちは。」


「由夏・・・。」


「言っときますけど、私、嫌いな男子と手なんか繋がないし、もしそんなことして来たら、速攻振りほどいて、ビンタだよ。」


そう言うと、ようやく由夏は俺の方を向いてくれる。その瞬間、手は離れたけど、すぐに由夏の右手がまた、俺の左手を迎えに来てくれる。


「私は聡志以外の男子と手を繋いたことないよ。聡志は、長谷川さんと繋いたの?」


「いえ、繋いでません・・・。」


「よろしい。」


なぜか敬語で答えた俺に、由夏は鷹揚に頷いた。


「だいたいさ、私が逃げなかったら、この話、あのまま、さっきの場所で続けるつもりだったの?」


「いや、その・・・。」


「少しは考えてよ。確かに人気はなかったけど、誰が見てるか、わからないじゃん。学校なら屋上か、せめてここでしょ?」


「じゃ、お前、あれはわざと・・・。」


「うん。せっかくコクってくれそうなのに、あそこはないと思って。と言って、今更校舎の中には入れないから、屋上は無理だし、私達と言ったら、やっぱりここでしょ。」


ここでしょって、お前野球部員じゃねぇし。でも、そうすると、あの鬼の形相は演技だったってこと?女って恐ぇ・・・。


「ということで。」


ここで由夏は表情を変えた。


「そろそろ私も素直にならないとね。」


「由夏。」


「私がありがとうって、言うとでも思ったって、さっきは言いました。でも本当は・・・ありがとうございます、とっても嬉しいです。」


そしてニッコリと微笑んでくれる由夏。


「聡志は、私のこと、ずっと好きだったって言ってくれた。でも正直、私はそうじゃなかったかもしれない。あなたの気持ちがわからなかったし、この野郎って思ったことも、ハッキリ言って、再会してからだけで、何度あったか。」


「すいません・・・。」


小さくなる俺。


「だけど、聡志のことを嫌いになったことは1度もないよ。もう知らない、あんな奴、そう思っても結局、私はあなたのことがいつも気になってた。大切な幼なじみだと思ってたから。でもそれだけじゃ、やっぱりなかったみたい。」


そう言って、由夏はちょっとはにかんだような表情になった。
< 212 / 217 >

この作品をシェア

pagetop