Smile  Again  〜本当の気持ち〜
甲子園から戻って、1週間程が過ぎた。


ベスト8まで残り、秋の国体の出場校に選ばれたこともあって、村井キャプテン・・・いや前キャプテン以下の3年生は練習には参加していたものの、あくまで自分たちの調整がメイン。俺達は松本省吾新キャプテンの下、新チームとして、始動していた。


とは言っても、松本、白鳥のツートップは休む暇もなく、高校選抜の代表に選ばれ、現在海外遠征中で不在。


5番バッターとして、松本先輩の後ろで睨みをきかす佐藤博(さとうひろし)、マネージャー兼任の木本みどり両副キャプテンがキャプテン代行で、練習が進められているが、ツートップ不在のグラウンドは、ギャラリーも激減で、活気ないことおびただしい。


そう言えば、由夏も姿を現さない。ま、あいつも松本さん目当てだから当たり前か。松本さんを目をハ-トにして、見つめてるあいつの姿なんか見たくないから、ちょうどいい。
 

「コラァ、1年。なんだ、そのだらけ切った態度は。」


「そうよ。ポジションが空いたからって、自然にみんなのものに、なるわけじゃないのよ。」


3年生の卒部に伴い、キャッチャー、セカンド、ショートそしてレフト、少なくとも4つのポジションが空いた。


それを俺達1年が埋めなくてはならないのだが、確かに指定席が確保出来てる奴なんて、1人もいない。俺だって、道原との競争に勝たなきゃ、レギュラーの座は掴めない。


佐藤さんとみどりさんに喝を入れられ、俺達は気合を入れ直す。


「沖田、行こうぜ。」


俺は沖田を誘って、ブルペンに向かう。


沖田には、関口さんに代わって、白鳥さんのフォロー、第2投手としての役割が求められる。


もし俺がピッチャーのままだったら、そのポジションを沖田と争っていたのだろうか?キャッチャー転向は、決して本意ではなかったけど、結果として、俺はレギュラーにより近い位置に身を置くことが出来てる。何が幸いするか、わからないもんだな。
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