Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「白鳥くんは?」


「ロードワークです。」


「また?1人で?」


「はい。」


「そう・・・わかった。」


みどり先輩が、ため息をつきながら、ブルペンを出て行く。


秋季大会の決勝戦は悔いが残る負け方だった。勝てた試合だったと思うが、こちらのミスをつかれての逆転負け。少なくても、この夏の甲子園までの明協では、考えられなかった負け方だった。


原因は1つではないが、俺と白鳥先輩がしっくりいってないことは大きな要素であることは間違いない。


俺の出すサインに、先輩がクビを振ったり、サインが合わずに、マウンド上で苛立った仕草を見せることは珍しいことではなくなった。


結局、最後は先輩の方からサインを出して、投げたい球を投げる。決勝戦の逆転打も、そんな球を痛打された。俺としては、釈然としない負け方だった。


関東大会まで、もう時間がない。改めてお互いの信頼関係を構築する為には、1球でも多く、白鳥さんの球を受け、コミュニケーションを密にするしかないと思うんだが、先輩をそれを避けるように、ブルペンに入らず、ロードワークばかりしている。


みどりさん達も心配してくれてるが、肝心の監督や松本キャプテンが何にも言わないから、日にちだけが過ぎてってしまう。


「なんだ、今日も別居か。」


そこへ、モヤモヤしている俺に、そんな声をかけて、ブルペンに入って来た人がいる。


「キャプテン。」


「うん?キャプテンなら、グラウンドの方に居たぜ。」


そういうと、村井さんはニヤリと笑う。ヤベッ、つい前のクセが出ちまった。
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