Smile  Again  〜本当の気持ち〜
結局、この日も俺は、白鳥さんの球を受けられず終いだった。村井さんは、ああ言ってくれたが、やはり俺としては、焦りを感じないわけにはいかない。


帰り道、なんとも言えない気分を抱えたまま、自宅の最寄り駅に降り立った俺は、次の瞬間、思わず足を止めた。


(由夏・・・。)


少し前を歩いている、由夏の後ろ姿が目に入ったからだ。そう言えば、今日はあいつは練習を見に来てなかった。水木とどっかで、くっちゃべった帰りかな?


あいつは歩き、俺は自転車だけど、帰る方向は一緒。もし、声を掛けたら、一緒に帰れるかな?


なんて思いとは裏腹に、俺は歩くスピードをなぜか、緩めていた。そんな俺に気付くことなく、由夏の姿は遠ざかって行く。


再会してから、早いもので、半年経とうとしている。入学してすぐ、校門で出会った時、素直に話していたら。


その前日に野球部のグラウンドで、あいつを見かけた時に、いやそもそも、こっちに戻って来た時、俺がすぐにあいつに連絡していれば、今、あいつの姿を見て、コソコソしなきゃならないような、情けない事態にはなってなかったのかもしれない。


最初のうちはただ照れ臭くて、つまんない意地張ってただけだった。でも、そのうちにあいつが松本先輩に夢中なのに気付いて、俺の出る幕なんて、全然ないことを思い知らされて、不貞腐れて、あいつに冷たい態度をとって、とうとう完全に怒らせた。


友達にからかわれて、由夏を突き放してしまったガキの頃から、俺は何にも成長してない。それどころか、俺はもう、由夏が知ってる小学生の頃の俺じゃないんだ・・・。
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