Smile  Again  〜本当の気持ち〜
伊藤先生から、諸注意や今後のスケジュ-ルの説明があって、今日は解散。残念ながら、今日は誰とも話せなかったけど、先は長い。焦らずに行こう。カバンを持って、立ち上がった私はそそくさと教室を後にする。


中庭では、部活の勧誘が始まっていた。私も何人かの先輩から声を掛けられたけど、失礼のないように頭を下げて、お目当ての場所に向かう。


(あそこだ。)


その場所には大勢の先客が既にいた。私の足は自然と早くなる。


(うわぁ。)


そこを取り巻いていたのは、大勢の女子。時に歓声を上げながら、その場所を見つめている。私もその中の1人に加えてもらう。


私達の視線の先、グラウンドでは野球部が練習している。私は素早く、グラウンドを見渡す。


(いた!)


そして、ついにお目当ての選手の姿を認めた私の胸は、跳ねる。


その人は、サ-ドのポジションでノックを受けていた。ノッカ-の放つ打球を横っ飛びでつかむと、素早く立ち上がって、矢のような送球をファ-ストヘ。その瞬間、大きな歓声が上がる。


(カッコいい・・・。)


私は、ただただ見とれてしまう。


松本省吾(まつもとしょうご)先輩、私達にとっては1学年上。1年生の夏から5番サ-ドでレギュラ-。3年生の引退に伴って4番打者となり、チ-ムの中心選手として、明協高校を甲子園夏春連覇に導いた。


そして今、ここにいる多くの女子高生達が、目をハ-トにして、先輩の一挙手一投足を見つめている。私もその1人。


私は、松本先輩に憧れて、明協高校に入ったんだ。
< 4 / 217 >

この作品をシェア

pagetop