Smile  Again  〜本当の気持ち〜
試合?勝てるわけねぇじゃん。今のウチのチームなんて、小学生にだって、勝てるわけない。


塩崎ってのは、1つ歳が上っていう以外に、俺より優ってるところを見つけるのは難しいって思うくらいの奴で、ピッチャーとして、どっちが優秀かっていうことは、本人を含む野球部全員がわかり切ってることだった。


だが、それを選手起用に反映させるはずの監督がいないようなもんだから、あいつがデカい顔して、のさばってた。


でもいくら上級生風を吹かせても、グラウンドの上じゃ、そんなものは通用しない。大したことない奴が、まともに練習もしてないんだから、まぁ面白いように打たれた。


マウンドで立ち往生するあいつを、バックも助けるどころか、足を引っ張るだけ。このままじゃ試合が終わらない、青くなった監督は、慌てて俺をリリーフに送った。


たまりに溜まっていた鬱憤を全てぶつけるように、投げ込む俺の球を相手チームは、打ち返すことは出来なかった。残念ながら、試合の大勢には、なんの影響もなかったけど。


試合後、さすがにアタマに来たらしい監督は、塩崎以下の2年生を叱責すると共に、エースの交代、つまり塩崎に代わって、俺を主戦投手にする旨をみんなに告げた。 


俺は当然のことと受け止めたけど、しかしこのチームでは全くそうではなかった。


だって、この状況に至って、少しはやる気を出してくれるかと思った監督が、次の日からまた姿を現さず、練習の指揮は、結局塩崎が執るんだから、たまらない。


監督の「正しいはずの判断」は、部内での俺の立場を悪くしただけ。もともと俺に対して、含むところがあった塩崎は、これ以後、露骨までに俺への敵意を剥き出しにして来た。


俺の投球練習を禁止して、毎日ただグラウンドを何周も走らせてたかと思うと、突然、満足なウォームアップもさせずに、100球以上の投げ込みを命じる。


明らかに、俺が壊れるか、嫌気がさして逃げ出すことを狙ってのこと。負けてたまるか!
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