Smile  Again  〜本当の気持ち〜
そして、また沈黙が私達を包む。もう間もなく家に着く。まだ帰りたくないな、せっかく久しぶりにこうして聡志と話せたのに・・・。


「あのさ。」


「うん?」


「さっき、バスから降りてきた時、なんであんな浮かない顔してたのよ?」


思い切って聞いてみる。


「そうか?そんな浮かない顔してたか?」


「うん。」


「へぇ、少しは俺のこと、気にしてるんだ。」


「ち、違うよ。たまたま目に入っただけ。」


何故か全力で否定してしまう私。


「気のせいだよ。キャッチャーなんてポジションやってると、段々喜怒哀楽が出にくくなっちまうんだよ。」


苦笑いを浮かべて答える聡志。


だいたい聡志、なんでキャッチャーなんかやってるのよ、私が核心をついた質問をしようとした時だ。


「着いたぞ、由夏。」


聡志の声がする。


「行くぞ。」


何か言いたそうにしてる私を尻目にさっさと家の玄関に向かう聡志。もう!


待ち構えていた両親は、当然おかんむりだったけど、聡志が自分と帰ろうと引き止めたから、すみませんでしたと、一緒に謝ってくれたから、あまり厳しくは怒られずに済んだ。


「ありがとう、聡志。」


帰ろうとする聡志を見送りに出た私は、お礼を言う。


「これに懲りて、夜遊びは控えるんだな。」


「ちょっと夜遊びって・・・。」


「ハハ、じゃぁな。おやすみ。」


そう言って自転車にまたがった聡志に、私は思わず言った。


「今度、一緒になんか食べに行かない?今日のお礼したいから。」


「礼されるほどのことじゃねぇよ。」


そう言って走り出そうする聡志に


「じゃ、これからは帰り、一緒になっても、もう知らん顔しないでよ。こないだみたいに。」


その私の言葉に、ハッとしてこちらを見る聡志。


「おやすみ、聡志。」


私は、そう言って、聡志に笑顔を送ると、家の中に入った。


(由夏、なんだよ、その笑顔。反則だぜ・・・。)


聡志は、そんな私の後ろ姿を見送っていたけど、やがてペダルを踏み込んで、走り出して行った。
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