Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「いよいよだね。」


由夏が俺に近づきながら言う。だから、不用意に距離を縮めんなって。本当に親たちが近くにいなかったら、僕は君の身の安全は保証できませんよ!


「頑張ってね。」


由夏・・・ダメだ。もうどうなってもいい、今ここで抱きしめて、告白してやる・・・俺の理性が崩壊しかかる。だけど、もしそんなことをすれば、俺は次の瞬間、由夏の平手打ちの一撃を食らい、そしてもう2度とこうやって話すことも、叶わなくなるに違いない・・・。


俺は深呼吸をすると、懸命に自分の邪な考えを押さえつける。


「ちょっと、人が頑張ってって、言ってあげてんだから、返事ぐらいしなさいよ。」


すると怒ったような由夏の声が聞こえて来る。俺の気も知らないでと、言いたいところだが、これは由夏の方が正しい。


「聞こえてるよ、ありがとうな。」


「甲子園、応援行くから。」


「キャプテンほど、いいところは見せらんねぇだろうが、まぁ精一杯頑張るよ。」


「凄いよね。レギュラーで背番号2、チームの司令塔なんだから。」


「なんだよ、今更。別にそんなの、秋の県大会からだ。」


「それはそうだけどさ。甲子園で、ってなるとまた違うし。それに、おめでとうって言う機会、今までなかったし。」


由夏・・・。


「そう言えばさ・・・。」


それまで、完全にペースを握ってしゃべってた由夏が、ここで、ちょっと言い澱んだ。そして、ひと呼吸置いて、こう言った。


「聡志、なんでピッチャー辞めちゃったの?」


その由夏の問いに、俺は思わず息を呑んだ。
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