Smile  Again  〜本当の気持ち〜
以来、俺はキャッチャーをしている。あれほど嫌だったのに、もう野球を続けるには、このポジションしかないと思ったら、結構面白くなって来た。


だけど、心の傷が癒えた訳じゃない。その証拠に俺はピッチャーだったことを、こっちに帰って来てから、隠し続けて来た。忘れてしまいたい、そんなこと出来るわけないのに、そう思ってる自分がいる。


今にして思うと、俺が由夏と素直に話せなかったのは、あいつの口から俺がピッチャーだったことが、みんなに伝わることが嫌だったことも理由の1つだったのかもしれない。


由夏は野球部の関係者じゃないから、まだよかった。だけど、まさか俺がピッチャーだったことを知ってる奴が2人も入部して来るとは思わなかった。


仁村はどうも小学生の時の俺のことを相当いいピッチャーだったと認識してるらしい。それは本来、感謝しなきゃいけないことなのかもしれないが、今の俺には迷惑なことでしかない。


仁村の幼なじみの白石真弓も、マネージャーとして入部して来た。アイツらには申し訳ないが、余計なことを言って欲しくない。


だから、我ながら心の狭い奴だとは思うが、俺は2人に昔の話をすることを露骨に嫌がって見せた。アイツらはきっと俺のことを酷い奴だと思っただろう。ま、その通りなんだから、仕方ない。


それにしても、あの2人はずっと幼なじみ続けられてるんだな。昔と変わらぬ仲良しの仁村と白石のことが正直、羨ましかった
< 72 / 217 >

この作品をシェア

pagetop