Smile  Again  〜本当の気持ち〜
今年の夏も暑い。甲子園へ向けての、熱くて長い戦いの始まりだ。


生徒や教職員、保護者、OB、OG達でギッシリ埋まったスタンドを見上げれば、俺達に寄せられる期待を否が応でも、感じないわけにはいかない。


「俺達は確かに、昨年の夏の甲子園の代表校であり、春の選抜優勝校でもある。だけど、俺達は決して挑戦を受ける立場じゃない。今の俺達は去年の夏のチ-ムとも今年の春のチ-ムとも違う。そして、それは他校も同じだ。高校野球に王者なんかいない。そこを勘違いしたら、俺達はそこで終わってしまう。一戦必勝、先の事を考えてる余裕なんかない。目の前の相手と全力を尽くして戦うこと、俺達が為すべきことはそれしかない。さぁ、行くぞ!」


試合前、松本キャプテンの檄に、力強く応えて、俺達はグラウンドに向かった。


先発は沖田総一郎、間違ってもらっちゃ困るが、決して相手を舐めてるわけじゃない。沖田から尾崎、そして最後は白鳥さんが抑える。これがこの夏の明協の投手起用スタイルなんだ。


ファ-スト久保さん、セカンド金谷、サ-ドキャプテン、ショ-ト仁村、レフト神、センタ-大宮さん、ライト佐藤さん・・・フィ-ルドに散ったナインを俺はグラウンドでただ1人見渡すことが出来る。


(みんないい顔してる。俺も負けてはいられない。)


俺の後ろで、主審がプレ-ボ-ルを宣する。


(さぁ由夏、行くぜ。)


いつものように、俺はスタンドの由夏にそう呼びかけると、マウンドの沖田に、初球のサインを発した。
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