Smile  Again  〜本当の気持ち〜
ウチの高校は、やっぱり強いよ。夏の甲子園3年連続、春夏通算5期連続の甲子園出場に向かって、快進撃。


エ-スの白鳥先輩を最後の抑えに回し、沖田くんと尾崎くんが交互に先発を務めてるけど、その作戦が今のところうまくいってる。


打線も松本先輩を中心に絶好調。期待のル-キ-仁村くんは3番に抜擢されて大活躍。


そして、そんなチ-ムの守りの要を、2年生ながら務めてるのが聡志。考えてみたら、あいつ甲子園の優勝キャッチャ-なんだよね。私は認めたくないんだけど、ひょっとしたら、あいつ本当にキャッチャ-向きだったのかもね。去年の夏に1試合だけ出た時のおたつきぶりとは、全く別人。


「ねぇ悠。これはもう決勝戦まで負けないよ。」


「私もそう思う。ライバル、東海高校との決戦だね。」


私達は、かなり早い段階で、そんなことを話していたけど、実際にその通りになった。


これまで、ずっとリリ-フに徹してきた白鳥先輩が、ついに満を持して先発のマウンドへ。先輩が投げる機会が少ないことに、ずっとブ-たれていた悠は大喜びだったけど、試合はその先輩が、立ち上がりを攻められ、いきなり2点を失う。


反撃したいウチの高校は、松本先輩以下の強力打線が、東海高のエ-スに完璧に抑え込まれ、試合は瞬く間に9回へ。


明協は7番からという苦しい打順。金谷くんが簡単に抑えられた後、打席には8番の聡志。


(聡志、お願い、塁に出て。)


打撃はお世辞にも得意とは言えない聡志。でもこの打席は懸命にピッチャ-のボ-ルに食らいつく。ファール、ファ-ル・・・前に飛ばないまでも、何とかして塁に出たいという聡志の執念が感じられる。


そして、12球目、根負けした相手ピッチャ-が四球を出すと、聡志はガッツポーズで1塁に。高校野球では禁止されてるはずのガッツポーズ、審判に怒られないかとヒヤヒヤしたけど、なんか小学校の時のあいつを見たような気がして嬉しかった。


続く9番の白鳥先輩は、聡志と違ってピッチャ-じゃなきゃ、もっと上位を打ってるはずの好打者。相手投手の動揺を見越したように、初球を叩くと外野の間を抜く二塁打。同点に追いつくチャンス!


だけど、1番の大宮先輩は三振でツーアウト。4番の松本先輩まで回すには、あと2人ランナ-が出ないと・・・万事休すかと思われた次の瞬間、伏兵2番久保先輩がなんと逆転サヨナラホームラン!


歓喜する私達と対照的に、ガックリとマウンド上で跪く相手エ-ス。あまりにも残酷なコントラストがここにあった。
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