Smile  Again  〜本当の気持ち〜
私が向かったのは駅。そう、聡志を出迎えようと思って。一言、「おめでとう、頑張ったじゃん」って言ってやりたかったから。


なんとか聡志との距離を縮めたいと、思ってはいるんだけど、聡志は練習が忙しいし、まさかグラウンドで声をかけるわけにもいかず。


クラスも違うから、学校で話すのも、案外難しい。それに声を掛けたはいいけど、冷たくあしらわれるかも、なんて考えると、なかなか私も踏み出せない。


そんなこんなしているうちに、また一学期が過ぎて行こうとしている。今までの経験上、学校の外の方が、聡志も話してくれるみたいだから、今日みたいなキッカケがある時を逃したくはない。


自分も毎日通っているルートだから、まず行き違いになることはないだろうと思って、待っていると、ちょっとして、聡志が改札口から出て来るのが見えた。


「聡志!」


私が声を掛けると、振り向いた聡志が驚いたような表情で立ち止まる。


「由夏、どうしたんだよ。」


「待ってたんだよ、聡志のこと。おめでとうって言いたくって。」


「それでわざわざこんなとこで待ってたのかよ。だいたいなんで、俺が帰って来る時間がわかったんだよ?」


「まぁ勘、かな。」


「なんだよ、それ。ストーカーか、お前は?」


「失礼ね。なんで私があんたのストーカーになんなきゃいけないのよ。」


なんて言い合いになりかけるけど、実は聡志もちょっと喜んでくれてることはなんとなくわかる。


「ま、いいや。とにかく自転車取って来るから、待ってろよ。」


やっぱり学校の外だと、話せる。そんなに私と幼なじみなのを知られるのが嫌なのかな?


ま、とりあえずいいや、なんて心の中で聡志の真似をしながら、あいつを待った。
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