Smile  Again  〜本当の気持ち〜
自転車で並んで走り出して、少しすると


「ちょっと、コンビニ寄るから。」


と聡志が言う。


「どうしたの?」


「夕飯買って帰るんだよ。」


「えっ、おばさん達、いないの?」


「何言ってんだよ。お前んちの親と出掛けたんだろ?」


「そうなの?」


私は驚く。


「知らなかったのかよ、祝勝会するんだって。勝つと決まってるわけじゃねぇのに、朝から張り切ってたぜ。俺を除け者にして、何が祝勝会だよな。」


そう言って、聡志は苦笑いする。


「知らなかった・・・。」


私も言葉を失う、というかさすがにちょっと呆れる。


「ということだから。」


そう言って自転車を止める聡志に、私は思わず言っていた。


「聡志、じゃ一緒に夕飯食べようよ。」


「えっ?」


「作ってあげるよ、ウチ寄って来な。」


私の言葉に何故か固まる聡志。


「どうせ私もお夕飯ないし、聡志の祝勝会やってあげるよ。って、今からじゃ、そんな大したもの作れないけどさ。」


「・・・。」


だけど、黙って私の顔を見ているだけで、返事もしない聡志。なに、こいつ、せっかく人が言ってやってんのに・・・。


「ちょっと、返事くらいしたら。わかった、私の料理なんか、恐ろしくて食えないとか思ってんでしょ。」 


「ちげぇよ。」


ようやく口を開いた聡志の口調は、ちょっと怒ってる。


「じゃ、何なのよ。せっかく人が・・・。」


「お前なぁ、自分が何言ってるか、わかってんのかよ?」


「え?」 


キョトンとする私に、聡志は続ける。


「お前んち、今誰もいないんだろ?そこへ俺が上がり込むって、どういうことだかわかんねぇのかよ?」


「どういうことって・・・?」


「俺とお前、2人きりなんだぞ。」


「うん。」


「お前、それで、何とも思わねぇの?俺のこと誘ってんのかよ。」


「だから、さっきから誘ってんじゃん。一緒に夕飯食べようって。」


私の返事を聞いた聡志は、私の顔をまじまじと見ると、大きなため息をつくと言った。


「唐揚げ。」


「えっ?」


「他に何にもいらないから、鶏の唐揚げ、山ほど作ってくれよ。」


「聡志・・・。」


「前にウチで食事会やった時の唐揚げ、めちゃくちゃ美味かった。あれ、由夏が作ってくれたんだろ?だからまた頼むよ。」


「うん、オッケー。」


思わぬ聡志からのリクエストに嬉しくなって、私は笑顔で頷いた。


(こいつは悪魔だ・・・。)


聡志が内心、そう嘆いてたことも知らずに。
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