Smile  Again  〜本当の気持ち〜
練習が終わり、夕食の時間になっても3人は戻って来ない。俺達が、重苦しい空気のまま、食事を摂っていると、監督と白鳥さんが入って来た。


「白鳥!」


「白鳥さん。」


一斉に2人に取り囲む俺達。


「心配かけて、スマン。大丈夫、大したことない、開会式の前の日に、お騒がせしたな。」


笑顔でそう言う白鳥さんに、空気がホッとしたように緩んだ。


「ただ、明後日の試合はひょっとしたら、登板は厳しいかもしれない。だが、その時はその時だ。さぁ、とりあえずメシだ、さすがに腹減った。」


監督も明るい声でそう言うと、笑い声も起こり、みんなテーブルに戻った。


「そう言えば、みどりは?」


ふと気づいたように、キャプテンが言った。


「ああ、ちょっと薬局に寄ってもらってる。もうすぐ戻るだろう。なんだ、心配か?」


「はい。」


からかうような監督の言葉に、悪びれることなく肯くキャプテンに、また笑い声か起こる。


すっかりなごやかな雰囲気になった中、俺は内心、首を捻っていた。


大事な初戦に、白鳥さんが登板出来ないのは痛い。しかし、相手は初出場校で、全国大会で舐める訳ではないが、今の沖田、尾崎なら決して戦えない相手ではないだろう。


今の2人の口ぶりなら、その後の試合には間に合うようだった。夏の甲子園は長丁場、そして勝ち進むと試合間隔がどんどん短くなって行くのは、一発勝負のトーナメント戦の宿命だ。


白鳥さんの力と経験なしに、戦えるものではない。


心に湧き上がってくる言いしれぬ不安を、俺は抑えきれずにいた。
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