Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「やっぱり、先輩、どこかケガしてるのかな?」


「かもね。だって、ブルペンで練習もしてないよ。」


心配そうな悠に私も肯くしかない。迎えた夏の甲子園初戦、先発ピッチャーが白鳥先輩じゃないことに、私達応援団はどよめいたが、予選では先輩はリリーフに回っていたから、まだ納得出来た。


初戦の相手は甲子園初出場の高校で、正直私達も簡単に考えていたけど、実は意外な程の強敵。


先発の沖田くんは、緊張もあったろうけど、調子がよくなく、相手チームに点を与える。


こちらも懸命に反撃し、すぐに同点、逆転するけど、相手も食い下がって来る。沖田くんの調子があがらないのを見た居郷監督は、早めに尾崎くんをリリーフに送ったけど、彼も敵の勢いを止めることが出来ない。


試合は6対5、こちらのリードで8回に入ったけど、尾崎くんはピンチを迎えている。


「でも、どうするの?もし、先輩が投げられないとしたら、もうピッチャーいないよ。」


「そうだね、もう尾崎くんに託すしかないよね。」


しかし、私達の目から見ても、それはかなり酷のように思える。


マウンドには、尾崎くんを囲んで、内野手が集まって、励ましてる。この状況で練習すら、してないということは、白鳥先輩は登板不能なのだろう。初戦にして、我が校は大ピンチを迎えた。


とその時、ウチのスタンドが、ドッとどよめいた。


「由夏、見て。先輩出てきたよ。」


悠のはしゃいだ声に、視線を向けると、白鳥先輩が練習場に向かう姿が目に入った。


「よし、これで大丈夫だね。」


私はホッとしたように、悠に言った。
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