Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「選抜の前に、お前と1回話をしたよな。実は肩の調子は一進一退だった。」


先輩は淡々と話し始める。


「そして、大会が終わった後、医者からはっきり言われた。『お前、このままなら終わるぞって。』」


あまりに重いことをサラッと口にする先輩の顔を、俺は愕然として見つめる。


「さすがに考えたさ。そして決めた、投げられるまで、投げようって。」


「なんでですか?」


俺は思わず問い掛けていた。


「そこまでして、投げ続ける意味なんて、どこにあるんです?学校の為ですか?チームの為ですか?それとも俺達の為にですか?」


「自分の為さ。」


先輩は言う。


「今止めたとして、大金かけて手術して、それが成功したとしても、その後スゲェ時間のリハビリに取り組んでって・・・残念ながら、俺はプロの選手じゃない。だから、そこまでの労力を費やすことなんて、現実には出来やしない。それに最後の夏をあいつらと、お前達と戦えないなんで、真っ平ごめんだよ。」


「もちろん監督は、前から知ってるんですよね?」


「監督とゴーさんにだけは、医者に言われた時点で報告した。尾崎をピッチャーに戻し、俺をリリーフにしたのは、監督の苦肉の策だ。」


「監督は知ってて・・・。」


「誤解するなよ。監督にもゴーさんにもさんざん止められた。今なら手術までいかなくてもいいかもしれない、どうしても言うこと聞かないなら、退部させるとまで言われた。」


「先輩・・・。」


「だから、こうして投げ続けてるのは俺の意思だ。例え、お前がもっと早くに気付いて、止めてくれたとしても、答えは同じだ。俺を仲間外れにするな。」


そう言って、先輩が笑いかけて来た時、俺の涙腺は完全決壊した。


「村井さんに言われてたんです。」


泣きじゃくりながら、俺は言う。


「白鳥は自分で止める奴じゃない。だから潰れる前に、アイツを止めるのが、お前の役目だ、頼んだぞって。でも俺はなんの役にもたたなかった・・・。」


「そんなことねぇよ。それに、まだ潰れるって決まった訳じゃないねぇだろ。」


「先輩・・・。」


「勝とうな、今はそれだけを考えてろ。何度も言うようだが、このチームの司令塔は松本でもなければ、俺でもない。お前なんだから。」


今、ここで肯いちゃ、いけない。そう思ってるのに、俺はもう何も言えなくなってしまっていた。
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