Smile  Again  〜本当の気持ち〜
そんな先輩達の決意を、俺は知る由もなかったが、結局それ以上は何も言えなかった。


そして、遂に悲劇は現実となった。


担架に乗せられた白鳥さんは、苦痛に顔を歪めながらも


「松本、創、ありがとうな。」


とつぶやくように言った。その言葉を聞いたキャプテンは思わず上を向き、久保さんの目も潤む。


「ツカ。」


更に先輩は俺に呼び掛ける。


「面倒掛けたな、いろいろと。あとは頼んだぞ。」


「先輩!」


(あんた、試合中にみんな泣かせて、どうするんだよ。)


俺は思わず、心の中で悪態をつく。そんな中、万雷の拍手に送られ、先輩は運ばれて行く。


そんな状況の中、リリーフに駆り出された尾崎は悲劇だった。心身共に準備不足のままに、投じた1球はあっと言う間にレフトスタンドに運ばれて、スコアは0対7。試合は序盤で壊れた。


「冗談じゃない、試合はこれからだ。」


「えっ?」


「白鳥をこのまま、敗戦投手になんてしてたまるか。」


諦めムードが漂う中、キャプテンが鬼気迫る表情で言う。


「おうよ、まだこっちは7回も攻撃残してるんだ。」


「そうです。諦めたらおしまいです。絶対に勝ちましょう。」


闘将佐藤さんに続いて、檄を飛ばしたのは、ゴーさんと一緒に白鳥さんに付き添って行ったみどりさんに代わって、急遽ベンチに入った1年生マネージャーの村井紀子。ちなみにこいつは村井先輩の妹、さすがにしっかりしている。


だけど、こちらは下位打線。7番金谷、8番俺、そして9番尾崎とあえなく凡退。本当に申しわけない・・・。


「とにかく、これ以上、点をやるな。そうすれば、必ず転機は来る。しまって行け!」


監督の言葉に送られて、俺達はまたグラウンドに散った。
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