Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「おはよう。」


「おはよう、久しぶり。」


「焼けたねぇ〜。」


そんな会話が飛び交う教室、今日から2学期が始まる。


「おはよう、由夏。」


「あっ、おはよう、悠。」


登校して来た親友と挨拶を交わす。


「また始まるね。」


「そうだね。」


そう言う私達も、結構いい色に焼けている。プールやネズミさんのパークに行ったということもあるけど、基本的には甲子園焼けだ。


あの決勝戦は壮絶な試合になった。大量リードを奪われながら、徐々に反撃を開始した我が校が追いつき、追い越し、また逆転されという凄まじい展開の末、延長10回、松本先輩のサヨナラホームランで優勝。グラウンドの選手も、スタンドの応援団も号泣の結末であった。


翌日、凱旋して来たナイン達を一足先に戻っていた私達は熱烈に出迎えた。だけど、その中に白鳥先輩の姿はなく、バスから降り立つ選手達の表情は、2度目の春夏甲子園連覇の偉業を成し遂げたとは思えないくらい、固かった。


祝福のスピーチに立った校長が、得意満面の笑みを浮かべて、いつも以上に饒舌に語り続けたのに対して、監督の挨拶はぶっきらぼうと言ってもいいくらいの短さであり、選手代表の松本先輩に至っては


「優勝して、こんな辛い思いになることがあるなんて、考えてみたこともありませんでした。」


とまで、語って、そんな松本先輩の姿を、私は正視することは、とても出来なかった。


そして、翌日から、野球部は新たなるスタートを切った。


だけど、私達はそれを見つめることが出来ずにいる。


「ゴメンね、由夏。でも、私、今はあのグラウンドに行けない。白鳥先輩があまりに可哀想で、それに、あそこには、先輩の思い出が詰まり過ぎてる・・・。」


そう言っていまだに涙ぐむ悠。なぜ私にゴメンなのかと言えば、松本先輩はまだグラウンドにいるからだろう。


確かに松本先輩の雄姿を、あのグラウンドで見られるのも、残りわずかな期間だ。それを見つめていたい気持ちは十分ある。でも、そんな悠を置いて、1人でグラウンドに通う気にはならなかったし、何よりもあいつの姿を見るのが辛かったから・・・。
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