Smile  Again  〜本当の気持ち〜
こうして迎えた、秋季大会。俺達はなんと初戦で敗退、6季連続甲子園出場の夢はあっと言う間に絶たれた。


最後のバッターが打ち取られるのを、俺は呆然とベンチから眺めていた。チームとしてのまとまりを欠いたまま、戦いに入ってしまった俺達だったが、さすがに初戦で負けるとは思っていなかった。


それだけじゃない。この試合の途中で、俺は道原と交代させられ、ベンチに下げられた。村井さんの後を受け、レギュラーになってから、途中交代を命じられたのは、公式戦では初めてだった。屈辱だった。


帰りのバスの中で、監督は


「今のお前達じゃ、当然の結果だろう。それがわかっていながら、チームを立て直すことが出来なかった俺の責任だ。もう1度、一からやり直そう。」


と訴えたけど、涙を浮かべて、その言葉を聞いてる奴らが多い中、俺は窓の外を眺めていた。


こうして、来年の春の甲子園に向けての戦いは、あっさり終わってしまったが、俺達には別の戦いが、待っていた。そう、夏の甲子園大会優勝校として、臨む国体。松本先輩達にとって、高校生としての最後の戦いだ。


白鳥さん、久保さん、そしてみどりさんの姿は見えないけど、松本さん、佐藤さん、大宮さんが復帰したチームはピリッと締まった。さすがの存在感、グラウンドに活気が戻った。


だが、そんな輪の中の外に俺はいた。俺はレギュラーから外されたんだ。当たり前のように自分のものだと思っていた背番号2は、道原の背中に移ってしまった。


その理由の心当たりはあり過ぎるくらいある。だけど、俺はそのことを省みるどころか、ただ監督やチームに対する反発心を強めるだけだった。


(そっちがその気なら、こっちにも覚悟がある。)


俺は無断で練習を休んだ、そうボイコットしたんだ。珍しく陽の高いうちに帰って来た俺に、驚いた母さんがあれこれ尋ねて来たが、ろくに返事もしないで、俺は部屋に閉じこもった。


その後、心配した神達から電話やメールが来たが、一切無視して、メシ食って早々にべットに潜り込んだ。
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