人魚姫
未來にバレた?
でも全身鱗だらけのあたしを見たあとでこんなに平然としていられるか?
「琉海ちゃんこのまま僕のとこにいなよ。大冴のとこに行くの止めなよ。大冴の彼女じゃないんだったらこのまま僕の彼女になりなよ」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って」
「ね、そうしなよ」
未來は起き上がるとあぐらをかいて座った。
すらりとした白い上半身の下は……。
な、なるほど。
人間の男の生殖器はあんな風になっているのか。
なんか似たような形をした貝を海で見たことがある。
「とりあえず、ここから1番近い海はどこ?」
今はそんなことに感心している場合ではない、とにかくこの後のことを姉たちから指示を仰がなければ。でもその前に……。
「あと、買ってきた牛丼食べていい?」
琉海は3杯目の牛丼を手に取る。
「未來も食べれば?すっごい美味しいよ」
琉海が食べるのをそばでニコニコしながら見ていた未來は首を振った。
「僕ベジタリアンなんだ。あ、でも別に何か特別な思想があってなわけじゃないよ。ただ味があんまり好きじゃないだけ。だから琉海ちゃん好きなだけ食べなよ。それにしても昨日あれだけ飲んでよく食べれるねぇ」
お菓子しか食べない大冴の後はベジタリアンかぁ。
琉海は紅生姜をつまんで口に入れた。
「にしてもなんで海?」
未來はペットボトルの水を飲む。
それを見た琉海は自分が猛烈に喉が乾いていることに気づく。
「あたし何かを決めるときは絶対海を見ながらじゃないとだめなの、それも1人で。ねぇあたしも水ちょうだい」
もっと突っ込まれるかな、と思ったが未來は素直にふーんとうなずきながら、琉海にペットボトルを手渡した。
喉を鳴らして飲む水は牛丼より美味しく感じられた。
ベッド側に置いた小さなテーブルの上に錠剤の薬が置いてあった。
睡眠薬だった。
未來は今でも眠れない夜があるのだろう。