嘘つきな唇
もうすぐ出ます、ってだけ返信





…なんかこれじゃ
付き合ってるみたいじゃない?

なんて思いながら









「じゃあ、俺紗花送って行くから。」




会計済ませて財布をカバンに閉まってると
当たり前の様に直人くんが






「…紗花だけ女の子扱いずるーい。」

「お前は大丈夫だろ。」

「はいはい。じゃあね、また月曜日ね。」

「おー。」

「陽菜、気を付けて帰ってねー。」






直人くんに肩を抱かれながら
幸せそうに笑う紗花




…それ、酔ったフリ?


絶対わざとくっついてる






そういう事、簡単にできちゃう紗花が
羨ましいっていうか

…なんていうか。







そんな二人の背中を見送って
ため息つきながら外へ出る



コンビニでも寄って
もう一本くらい飲もうかな、なんて











「やっと来た。」

「へ?」





声の主は、智也くん






「…な…待ってたんですか!?」

「うん。もう一軒、どう?」

「大丈夫です!明日も予定ありますので!」

「えー。何時から?仕事?」

「仕事じゃないですけど…」

「いいじゃん♡こんな偶然、滅多にないよ?運命感じるじゃん!」

「運命って…」





20代の男が、
恥ずかし気もなく何を言う…






そのまま引っ張られるように
小さな路地の中の居酒屋へ








「おー智也。女連れかよ。」

「まあなー。生2つ。」






店員さんと親しげに話す智也くん





「…友達?」

「ここ、兄貴の店。」

「へえ…」

「親父がやってたんだけどな。」








…なんだか、それ以上聞いちゃまずい気がして

黙ってメニューに目を落とす









「…ビール飲んだら帰りますね。」

「ん。悪いけどちょっと付き合ってな。」







なんでだろう



仲良くなる気なんかないのに








断れない自分が


流されて言う事聞いてる自分が







情けなくて仕方ない

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