花と雫
たとえ、抗議をしたところで何にもならない。
それはここにいる全員、いや学園の生徒全員が分かっていることだ。
だから好き勝手にやれている部分がある。
他の学校と違って少々校則が甘めであるのもそれゆえであろう。
「まず、生徒会の仕事だが主に二つだ。一つは学校運営。これは一般的な生徒会と同じだと思ってもらって構わない。例を挙げるなら明日に行われる入学式での挨拶と数日後に行われる歓迎祭での準備だ」
「そして、もう一つ。他言無用であるのはこちらの方である。知っての通りこの学園には様々な人間がいる。ご子息ご令嬢も珍しくない。そして、そういう方々から多額の寄付金をもらっている。そうやって学園が運営されている。だが、物事はいつだってギブアンドテイクである」
段々理事長が言わんとしていることがわかってき始めた。
この中にもそういう寄付する側の人間がいることからおそらく生徒会が行っている活動を知っている人間もいるのだろう。
ただ驚くことなく平然と理事長を見る面々をちらりと見つつ、冬華はばれないように息を吐きだした。
「もう一度言う。学園内には様々な人間がいる。そこで起こる問題は数知れず。だが、時として、“問題”なんていうものでは済まされない物もある。表ざたにできないようなね。それを穏便に解決することがもう一つの仕事だ。もちろん、それ以外でも生徒から寄せられた案件に関しては出てもらうがね」
まるで、何かを射るような表情をして淡々と述べる理事長に各々はいたって普通の反応である。
想定内と言ったところだろう。
「ということだ、このことはわかっていると思うが他言無用である。漏れた場合についてはそれ相応の処分を下すということをわかっておいてくれ。では、生徒会室で自己紹介なりなんなりをやってくれ」