花と雫

そういった理事長に冬華は少し肩の力を抜く。
だいたいの解釈をするとこうである。

この学園で起こっている問題を秘密裏に解決せよ。ただし、対生徒の場合のみである。そこに大人が絡めば即理事長へと報告。

ここまで明言はしていないが、拡大解釈をすれば「大人の事情には突っ込むな」ともとれる。

ただ、仕事内容は理解できたが自分が選ばれた理由は到底理解できない。
選ばれる意味がわからない。

「では、失礼します」

悠真がそういって、理事長室を出ようとするそれに全員が続こうとする中で私は理事長の瞳を捕らえた。

「…新崎さんは残ってくれるかね」

冬華の意思がまるで伝わったかのようにそう発した理事長に頷いた。
他の人達は少し驚いたようだったが、そのまま部屋を出ていく。

バタンっと重々しい扉が閉まればこの空間には冬華と理事長しかいない。

「新崎さん、何か言いたいことでも?」

もうすでにわかっている癖に聞いてこようとする理事長に微かに眉を顰めつつ、冬華は口を開いた。

「いえ。ただなぜ私だったのかなと思ったまでです」

他のメンツが選ばれた理由であれば何となく察しがつく。
だが、自分はどうだろう。
何かが突出してできるわけでもない。
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