花と雫
「じゃあ私からのプレゼントだと思えばいい。君の言葉を借りるならこれぞまさに“新作の乙女ゲーム”だろう?」
椅子に背を預けながら、意味ありげに口角を上げた理事長に冬華も微笑み返す。
「これは、これは。無粋な計らい感謝します。ですが理事長。“控える”ことはできても“やめる”ことはできないのですよ。あなたの喫煙と同じですね」
そういえば、理事長は苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「お前もいうようになったな。まぁいい。今はそれでいい。そんな理由も少々込むがあとはあれだ。ただ単に必要だと思ったから選出した。ほら、話はこれで終了だ。早く行け」
理事長というには若い彼が頭をかいているのを見つめながら冬華はもう一度笑った。
「まさかこのゲームが理事長までも攻略対象だとは気が付きませんでした。さすればここが√の分岐点でしょうかね?」
「抜かせ」
そう眉を寄せながら言う理事長に背を向け、冬華は「はいはい」と言いつつ理事長室を出た。