花と雫
乙女ゲームでもテンプレである。
イケメンだし、優しいし、行けるわ!と思った時に限って監禁エンドを食らう。
これまで何人に監禁されてきたか。
「朝からしかめっ面だな。ブスに磨きがかかるぞ」
顔をしかめながらプリントをにらんでいれば隣からガタンと椅子を引く音がした。
窓側から反対に顔を向けると、案の定そこには見慣れた端正な顔があった。
「うるさいですぅ、こちとら1時間しか寝てないの」
呆れながら悠真は椅子の上に荷物を置き、机の上に腰を掛けた。
「馬鹿だろ。なんでわざわざ昨日したんだよ」
その様子からどうやらゲームで寝不足だということも見抜かれているようである。
「しょうがないじゃん、昨日発売だったんだもん」
だが、いいのだ。
いくら眠くても乙女ゲーに罪はない。
むしろ、心を豊かにしてくれるコンテンツだと冬華は思う。
「はいはい」
あしらうように言う悠真に冬華息を吐きだして口を開いた。
「ねぇ、眠いからさぁ…一緒にさぼろっか?」
ゆっくりと口角を上げて、悠真を見やれば小さくため息をついている姿が目に入る。
「バーカ。さすがに今日は無理だ。どうせ生徒会メンバーつってもあいつらだろーけど。さすがに出ねぇと柳先生に怒られるだろ」
確かに、と悠真の言葉に納得する。
怒られるという点ではなく、もうメンバーが決まっているも同然という点に。