花と雫

こんなマンモス校でそうやすやすと副会長様にお会いできる機会なんてない。
ましてや、今日は二人きり慣れるかもしれないチャンス付きである。

利用しないわけがない。

「お目当ての人物はあの人じゃないの?」

会場内をまだきょろきょろ見ていれば、雅人に肩を叩かれた。

「もういたのか、へぇ」

思わずそんな声が出た。
そして、ゆっくりと口角が上がっていくのが分かった。

「あの顔はまだ出さないってわけね」

視線の先には桜をあしらったドレスを着て、友人とみられる女とケーキを食べている彼女がいた。

あの時のようにメイクはしていないが、いつもと違う雰囲気を出していることは確かだった。

「亮が気に入りそうなタイプの人ではなさそうだけどね」

ぼそりといった雅人の声を無視しつつ、ジュースをグイっと飲み干し笑った。

「んじゃまあ、もう少し様子見ですかね」
< 41 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop