花と雫
まるで王子様のように言い寄られている。
やっぱりいいか。
そう思い、帰ろうとしたところで不意に奏と目があった。
一瞬、奏の瞳にじっと捕らえられたかと思うといきなり、腕を引かれた。
あまりにも急な反応に冬華は思わず、奏にもたれかかってしまう。
「皆様、お誘いありがとうございます。ですが、会長は副会長と踊るという生徒会の取り決めがございますので、今宵は残念ですがお引き取り願います」
奏が言えば、周りの女子たちはその微笑みに胸を撃ち抜かれつつ、残念そうにその場を離れて行く。
「だしに使われた」
「悪いな、けど、お前踊れねぇだろ?恥かかずに済んでよかったな。むしろ感謝しろ」
無口で不愛想だと思っていたが、前言撤回である。
意地悪そうに見下ろす視線からはそこに秘めている獣っぽさを感じさせる。
「そりゃどうも。けど、私踊れるから」