花と雫
「てか、冬華行かなくていいの?会長と踊らないといけないとかなかったっけ?」
突然そういわれ、冬華は少し焦った。
そんなこと言われていなかったような気がするけれど、どうだっただろうか。
だが、そんなことをしなくても奏の元にはたくさんの女子が集まっているのが見える。
別に自分じゃなくてもいいんじゃないだろうか。
そんな風に半ば開き直ってしまおうかと思ったが、とりあえず行くだけは行っておこうと冬華はゆっくりと歩き始めた。
「ちょっと、行ってくるね」
麗奈にひらひらと手を振れば、いってらっしゃいという声が後ろから聞こえる。
なんだかんだあの輪の中に行くのはかなりの勇気がいるのだが、まぁいいか。
そう思い、冬華は会長の元まで向かった。
近くまでくれば、女子たちの黄色い声も大きくなる。
やっぱり来なくてよかったかな思いながら、その様子を遠目に見てみる。
「奏様!わたくしと踊ってくださいまし」
「いえ、会長。私といかがでしょうか」
「いや、わたしと!」
奏を見れば、面白そうに眉を上げている。
「では、一曲私と踊っていただけないでしょうか」
奏が軽く跪き、手を出したので、冬華はそれに重ねるように手を置きドレス裾を軽くあげてみせる。
「よろこんで」