花と雫
優雅な音楽とともに軽やかなステップを踏み始める。
奏はその様子に驚いた。
自分より下の位置にある冬華の表情を見れば、余裕を持った笑みをたたえている。
「これ、一度や二度練習したレベルの動きじゃないだろ」
小声でそういえば、冬華はにっこりと笑う。
「小さいときにはまってた時期があったから一通りは踊れるんです、うまくはないけどね」
何を言う。
奏は思わず苦笑した。
幼少期にはまったなどというだけで本当にここまで綺麗に踊れるだろうか。
いや、真偽などどちらでもいい。
自分の中で新崎冬華という人間に対して明確な興味がわいたことを奏は感じた。