花と雫
「自虐かよ。まぁ、確かに顔がな」
「うわっ、抉ってきやがった」
冬華は思った。
私だって、好きでこんな顔に生まれたんじゃないわよ!と。
相対的評価をするならば、可もなく不可もなく。
これが冬華に下る評価だろう。
「どっちにしろ、もうすぐわかるからいいだろ」
悠真が席に着いたのを見て、冬華は時計を確認した。
理事長からの放送まであともうすぐである。
変人理事長に付き合わされるのは勘弁だと思いながらふけっていると教室の前方扉が開いた。
「座れー放送の時間になるぞー」
手をパンパンと叩きながら、入ってきた柳先生の言葉にみんなが席に着き始める。
静かになってもざわざわとした雰囲気はいまだ残ったままである。
だが、冬華の頭には一つだけ。
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい。
_________ピンポンパンポーン
念仏のように心の中で唱えていると突然放送がかかった。
いよいよ理事長のお言葉らしい。
「ただいまより、今年度生徒会執行部のメンバーを発表する」
理事長の低い声が聞こえたところでみんながシンとした。
冬華も同様に前を向きなおし、ただカフェのBGMのごとくぼんやりと言葉に耳を傾ける。