花と雫
「冬華か。別に置いてきたところで、だろ。拾って帰る理由もないし」
「よく言うぜ、なんだかんだ言って気にかけてるくせに…まぁいい。そんな話がしてぇわけでもねぇし。てか、なんで帰ってきてんだよ?」
潤は灰皿に煙草を押し付け、火を消した。
振り返れば、悠真と目があう。
悠真は大きくため息をついた。
「肺炎になられても困るから、監視でもしようかと」
それだけ言うと悠真は共有スペースへと戻り始めた。
その呆れたような言い方に潤は思わず口元を緩めてしまう。
あえて、言わないのは悠真なりの気遣いなのだろう。
だが、きっとそれを本人にいえばそれをきっと認めない。
しょうがねぇな。
潤は息を吐きだした。
「しゃーあねぇな。悠真の暇に付き合ってやるよ」
戻り始めた悠真の後姿にそう声をかけ、潤は共有スペースに戻り始めた。
もう一度空を見上げれば、月は雲に隠れてしまっていた。