花と雫

「午後からの授業やだなー」

昼食を取り終え、ユリにそう言いながら中庭を通り教室に向かう。
お昼時の中庭は意外と人通りが少ない。
そもそもこの学園が大きいため、中庭にも様々な種類があるのだが、特にこの南棟側の中庭は人が少ない。

だから、すいているトイレが多いという理由でよく通る道である。

「まあまあ、早く帰ってあげないと麗奈が寂しがるよ?」

「補修に引っ掛かるほうが悪いんだってば」

そんなことを言いながら帰っているときだった。

「うぅ、ヒックッ、っ、…っ、あ、すみませ、ん!!」

肩にぶつかったかと思うと目の前で泣いている女の子が座り込んでいた。
冬華は急いで手を差し出した。

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