花と雫
「大丈夫?」
「はい、ぶつかって、しまって、すみません。ではっ」
冬華の手を取り、立ち上がるとすぐにどこかへと走っていってしまった。
ユリと顔を見合せば、眉をさげ心配そうな顔をしている。
「ぶつかって泣いたってわけじゃないね」
ユリの言葉に頷いた。
泣きながら走ってきたのだからぶつかるよりも前に泣いていたのは確かだが、何より。
手を掴んだ時の手が震えていた。
そして、目があったときのあの瞳は、まるで。
「助けてって言ってるように見えたけどなぁ、私は」
もう一度握りしめられた手を見つめ、冬華は呟いた。
キーンコーンカーンコーン
「あ、やばっ。予鈴じゃん」
そうシリアスな雰囲気になったものの、予鈴がなりそのままユリと走ったため、そんな空気も教室につく頃にはすっかりなくなってしまっていた。