花と雫
「お前、やっぱ面白れぇな」
「えーそりゃどうも。でも、私襲われかけたんだよ?えー無事でよかったーとか言ってくれないの?」
からかうようにそう言えば、奏ははぁ、と息を吐きだし冬華の頭を撫でた。
「うるさい…無事でよかった」
そう顔を背けながらぼそりといった様子に少し驚く。
言ってくれるとは思わなかった。
「ではでは、先生。これは提出させていただきますね」
視線を転がっている渡部にやり、目の前にボイスレコーダーをちらつかせてやる。
「なんで、それを!」
「策は常にいっぱい用意しておくものです。見えているもので安心しきっていたでしょう?だから最初に確認すべきポケットはノータッチだった。すべて録音してあります。これで終わりですね」
にっこりと笑い、それを夏樹に預ける。
夏樹は一瞬目を見開かせるとそれを真剣な面持ちで受け取った。