ちゃんと伝えられたら
そう耳元で囁く坂口さんの方を向くと、唇にその熱を感じる。

「坂口さん、ここは会社ですよ。」

思わずつぶやいた私に坂口さんは余裕の笑顔を見せる。

「もう隠さなくたっていいだろう?腹をくくってしまえ。」

それだけ言い残すと、坂口さんは出て行った。

どうしよう…、ますます仕事が手につかなくなってしまう。

私はしばらくパソコンを見つめていたが…。

急にスイッチが入ったかのように、猛然とキーボードをたたき出した。

早くしないと、残業どころか徹夜になってしまう。

「おい、篠田。」

「お帰りなさい。」

私は帰社した坂口さんに、やっぱり気がつかなかったようだ。

「仕事の進み具合はどうなんだ?」

「正直キリがありません。でも会議録は終わりました。」

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