ちゃんと伝えられたら
坂口さんが私の手を取った。

「志保が寺本さんに言い寄られている姿を見る事が、俺にはこたえる。」

「坂口さん…。」

坂口さんは私を促して、歩き出した。

「これならついて来られない事はないだろう。」

ああ…、この人は…。

私の事をちゃんと見ているだけじゃなくて、ちゃんと私の事を考えてくれている。

もしかしたら、それが寺本さんと違う所なのかもしれない。

寺本さんは自分のペースを守る人、人に合わせる人ではないような気がする。

それなら…、私はいつも寺本さんに置いてきぼりになってしまう。

「坂口さん、道人さんのラーメン屋さんに行きませんか?」

「えっ?」

「私、坂口さんとダメになる事はないようですから…。」

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