ちゃんと伝えられたら
私は坂口さんの方を振り返った。

「何でもありません。」

寺本さんに関しては全て報告済みだった私が、初めて坂口さんに内緒にする。

すると坂口さんはふいに私を抱きしめようとする。

「あっ。」

私は咄嗟に身をひるがえしてしまった。

「志保…?」

「すいません、資料を返しに来ただけなので、デスクに戻ります。」

私は坂口さんに目を合わせる事も出来ずに、資料室を出ようとした。

すると坂口さんが私の腕を掴んだ。

「待て、志保。」

「放して下さい、今は話す事はありませんから。」

ついきつい調子で私は言い放ってしまった。

「違う、俺が話したい事があるんだ。今晩お前の家に行く。」

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