ちゃんと伝えられたら
寺本さんの表情が微妙に歪んだ。

「…やっと篠田さんの本当の気持ちが聞けましたね。あなたからちゃんと言ってもらえないと、自分の中でどうしても諦められなくて…。」

そして寺本さんは切ない顔を見せた。

「とりあえず今日は帰ります。」

そして坂口さんに寺本さんは頭を軽く下げた。

「でも本当に諦めるには時間がかかりそうです。」

そしてもう一度私に何とも言えない表情を見せた。

「この結果は分かっていたはずなのに…。でもあなたがこんなに好きですから。」

私と坂口さんは、その後ろ姿を見送った。

私は何度も胸の中でつぶやいた。

「ごめんなさい、寺本さん…。」

ああ、自分が不甲斐ない。











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