ちゃんと伝えられたら
私はその時の事を思い出す。

割り切って仕事をしようと思っていたけれど、あの時は本当につらくて…。

「…お前と一緒に居たい。」

坂口さんの顎が動く。

その感触は私の身体に直接伝わる。

「お前の事を…、仕事以外のお前の事ももっと知りたい。」

坂口さんの腕の力が強くなった。

「ダメか?」

私は首を横に振る。

そして坂口さんの方を振り返ろうとすると…。

「こっちを向くな。」

前にも同じことを言われて、驚いた事がある。

「坂口さん?」

「お前にこの顔を見られたくない。」

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